
10の州と3つの準州で成り立つカナダは、州によって税金や法律、社会保険制度などが異なります。そのためどこの州に住むかは、ワーホリや留学生だけでなく、カナダ人やカナダ移民ににとって大変大切なことです。
今回は、日本から留学・移民するにあたり知っておきたい、州によって違うルールをまとめました。既にカナダにお住まいの方でも州を越えて引っ越しを検討している人は要チェックです。
タップできる目次
都市の選び方① 気温・気候で選ぶ
広大な土地を持つカナダは、地域によって気温・気候が大きく異なります。
渡航するタイミングの気温を知っておくと都市選びのヒントになるかもしれません。
内陸部は夏冬の気温差が激しい
内陸部のオンタリオ州・マニトバ州・サスカチェワン州の夏は30℃超が普通で真夏は35℃を超える日も度々あります。ちなみにカナダ最高気温記録はサスカチュワン州の45℃(1937年記録)!日本の歴代最高気温は41℃(静岡・埼玉)なのでそれ以上です。
そして厳しい寒さが特徴のカナダ。内陸部のオンタリオ州・マニトバ州・サスカチュワン州では冬場は氷点下が当たり前。マイナス30~40℃に達する日もあります。最北部のユーコン準州においては歴代最低気温-62℃(1947年)を記録しています。
留学先や移住地として人気の高い大都市トロントやモントリオールも内陸部で夏は猛暑、冬は極寒の地域の一つです。
海岸部は年間を通して温暖で雨が多い
年間を通して温暖な地域はブリティッシュコロンビア州の海岸部の都市とノバスコシア州。
西海岸のバンクーバーやビクトリアでは、夏場は20℃後半。冬場は寒い日で5℃前後と大変過ごしやすい気候です。温暖な気候ですが、その代わりに冬場は降水量が一気に増えバンクーバーでは冬場はほぼ毎日曇りか雨でレインクーバーと呼ばれるほど。
東階段に位置するノバスコシア州を代表するハリファックスも似たような気候で、夏場は涼しく過ごしやすい日が続きますが、冬場の降水量は多めです。
- 内陸の州→ 夏冬の気温差が激しいが雨は少ない
- 海岸沿いの州→ 1年を通して温暖だが冬場は雨が多い
都市の選び方② 言語で選ぶ(英語orフランス語)
カナダは英語とフランス語が公用語となっていますが、地域によって使われる言語がハッキリと分かれています。
フランス語圏として有名なケベック州は、フランス語を公用語と制定しています。お店では「ボンジュール」とフランス語で挨拶されることも多いでしょう。しかし、モントリオールなどの大都市では英語を話せる人も多く観光で訪れる程度なら困ることはないでしょう。しかし定住を視野に入れるとフランス語を全く話せないと肩身が狭いかもしれません。
フランス語圏と言えばケベック州だけだと思いがちですが、オンタリオ州やニューブランズウィック州の一部の都市でもフランス語が使われます。例えば、首都のオタワはフランス語を第一言語とする人口がとても多い街。ただしガッツリフランス語のケベック州と異なり英語も話せるバイリンガルが多いのが特徴です。
- ケベック州→ フランス語
- オンタリオ州・ニューブランズウィック州→ 英語(地域によってフランス語)
- その他の州→ 英語
人種と移民の割合
カナダでは色々な国からの移民がたくさん生活しています。また移民だけでなく、カナダ人でも別国のルーツをもつ人も多いです。
カナダ全国で約22%は白人以外(ビジブルマイノリティ)で、その割合は都市によって大きく異なります。特に大都市周辺は移民を含むビジブルマイノリティの割合が高く、バンクーバーやトロントでは70%以上が白人以外という街もあります。
人種が色々でもコミュニケーションに使うのは英語かフランス語なので実際生活に困るようなことはありませんが、人種(特に移民)割合は雰囲気などちょっとした影響をもたらします。
例えば移民が少ない地域は英語にアクセントがなく聞き取りやすいと感じるし、アジア系が多い街は日本食品やグッズが手に入りやすくて便利だったりと住みやすいと感じる場所は好みで意見が分かれますね。
- 1位→ トロント(36%)
- 2位→ バンクーバー(13%)
- 3位→ モントリオール(12%)
- 4位→ カルガリー(5.4%)
- 5位→ エドモントン(4%)
(国勢調査2016より)
都市の選び方③ 日本との時差
日本に家族や友達がたくさんいる人は、連絡が取りやすいように時差を把握しておくことをお勧めします。
カナダには6つのタイムゾーンがあり、住む地域によって日本との時差が大きく異なります。しかも同じ州であっても地域によってタイムゾーンが異なったり、サマータイムの採用有無も地域によって異なるので大変複雑です。
例えば、バンクーバーとトロントでは3時間の時差があります。たった3時間ですが、日本の家族と連絡を取れる時刻を考えるとかなり限られてくる場合があります。
家族と自分のスケジュール次第で便利なタイムゾーンも違うので、どこの地域がベストとは言えません。私の場合、タイムゾーンが違う地域に引っ越しをする度に実家連絡のタイミングを計るのが難しくなります…。
カナダの時差と現在時刻(移動先:Time-j net 世界時計)fa-external-link
都市の選び方④ 日本との距離
日本に頻繁に帰国する人にとっては、日本との距離も大切ですね。カナダは大きな国なのでどの地域から帰国するかで時間のかかり方が大きく異なります。
日本行きの飛行機はバンクーバー(B.C.州)・カルガリー(アルバータ州)・トロント(オンタリオ州)・モントリオール(ケベック州)から就航しています。例えばバンクーバー空港からだと約9時間ですが、モントリオールからだと約13.5時間と4時間以上の違いになります。伴って飛行機運賃も少しだけ高くなります。
バンクーバー | カルガリー | トロント | モントリオール | |
所要時間 | 約9時間 | 約10時間 | 約12時間 | 約13.5時間 |
料金 | 1200~ | 1300~ | 1300~ | 1350~ |
※所要時間はダイレクトフライトの場合
※料金は年間平均値の安いほう(往復)
都市の選び方⑤ 税金の違い(消費税・所得税)
カナダは州によって税金が違います。
税金といっても色々な種類がありますが、ここでは一番身近な「消費税」と「所得税」についてご紹介します。
州によって異なる消費税
まず、私たちにとって一番身近な「消費税」は、買い物をする店の州によって大きく異なります。
カナダの消費税はGST(国税)+PST(州税)の合計が消費税として課税されます。GSTは一律5%で、PSTは州によって異なります。(下記GST一覧参照)
また、これとは別に、国税と州税を一緒にした「HST」を採用している州もあり、これらの州ではGSTとPSTは無く、HSTだけ課税されます。
fa-arrow-down各州のGST(HST)+PST一覧
ブリティッシュ・コロンビア州 | 7%+5% |
---|---|
アルバータ州 | 0%+5% |
サスカチュワン州 | 5%+5% |
マニトバ州 | 7%+5% |
オンタリオ州 | 13%(HST) |
ニュー・ブランズウィック州 | 13%(HST) |
ケベック州 | 9.5%+5% |
ニューファンドランド&ラブラドル州 | 13%(HST) |
ノバ・スコシア州 | 15%(HST) |
プリンス・エドワード・アイランド州 | 14%(HST) |
ユーコン準州 | 0%+5% |
ノースウエスト準州 | 0%+5% |
ヌナブト準州 | 0%+5% |
- 消費税が安い(5%)→アルバータ州
- 消費税が高い(15%)→ノバスコシア州・ケベック州
州によって異なる所得税
カナダの所得税は日本同様、年収によって税率が異なるだけでなく住んでいる州によっても大きく異なります。
特にケベック州は所得税が高いことで知られています。
例えば年収(課税対象額)が40万ドルの場合、オンタリオ州では5.05%ですがケベック州では15%も課せられます。(数値は2019年の場合)
最大でも他の州が10~20%程度なのにケベック州は最大25.75%の所得税を支払わなければならないので高所得の人は気を付けたほうが良さそうです。
ワーキングホリデーや学生などガッツリ稼ぐ予定がない人は低所得の税率が最も低いオンタリオ州(5.05%)やB.C.州(5.06%)がおすすめです。
各州の所得税率はカナダ政府のフェブサイトfa-external-linkをご覧ください。
- ケベック州は所得税率が高い(15~25.75%)
- 低所得の人はオンタリオ州やB.C.州(約5%~)がオススメ
都市の選び方⑥ 健康保険の違い
カナダには公的医療制度があり、保険カード(番号)をクリニック窓口に提示するだけで無料で医療サービスを受けることができます。保険料はかからず市民や移民は誰でも加入することが可能ですが、薬品や歯科サービスは対象外など日本の健康保険とは少し違うところも多いので注意が必要です。
さらにカナダの健康保険は州によって保険証のデザインの他、加入条件やカバー内容も異なります。
特に、ワーキングホリデーや学生ビザで滞在している人は州によっては公的保険の加入条件が厳しい(実質加入できない)ことがあります。加入条件はビザの有効期限や勤務時間、雇用先などが挙げられ州によって様々です。
また、待期期間(最大3カ月)が設けられている場合があり他の州や国から引っ越した場合でも、すぐに現地の公的保険に加入できないことがあるなど不便極まりありません。
- B.C州→ 可能(条件は易しい)
- アルバータ州→ 可能(但し、条件は厳しい)
- オンタリオ州→ 不可
都市の選び方⑦ 自動車関連(免許証・自動車保険)
カナダでは、自動車に関するルールも州ごとに違います。特に特徴的な自動車免許取得に関するルールや、免許更新、自動車保険についてみていきましょう。
州によって違う!カナダの免許証取得方法
カナダの自動車運転免許は州で管理されており、免許の種類や取るまでの年数に差があります。また、車のナンバープレートデザインも大きく異なります。
B.C.州で運転免許取得する場合
B.C.州では、学科試験に合格すると仮免許(Class 7L)が発行されます。その後1年の練習期間を設けたのち、路上実技試験(1回目)を受け合格すれば仮免許中級Class 7(Novice License)へ。そして2年の練習期間を設けたのち路上実技試験(2回目)に合格すればやっと普通免許(クラス5)に。このようにB.C.州で普通免許を取得するまでに最低3年かかります。
アルバータ州で運転免許取得する場合
アルバータ州では、B.C.州と同じ流れです。学科試験に合格後、仮免許(Class 7 Licence)を取得。その1年後の路上実技試験に合格すれば仮免許中級(Class 5-GDL Licence)を取得。その2年後の路上実技試験に合額すればやっと普通免許(Class 5 Licence)となります。各試験にストレートで合格しても最低3年必要になります。
オンタリオ州で運転免許取得する場合
オンタリオ州では、学科試験に合格すると仮免許(G2)が発行されます。その1年後に路上実技試験を受け合格すればG1の免許に。そのまた1年後の路上実技試験(高速道路)に合格すれば晴れて普通免許(G)を取得することができます。オンタリオ州では普通免許取得まで最低2年かかります。
ケベック州で運転免許取得する場合
ケベック州の場合は少し特殊で、自動車学校→仮免許→練習→学科試験→路上実技試験→普通免許(制限アリ)→普通免許(Full)という流れで、Full Licenceを取得するまで約4年かかります。
※各試験を受けられる年齢や条件も州によって異なります。
尚、日本の普通運転免許証からカナダの運転免許証に切り替える場合の手続きや必要書類はどこの州でもほぼ同じです。
カナダの自動車保険(州別)
カナダでは自動車保険とシステムも州によって異なり、州立保険公社に強制加入の州(B.C.、マニトバ、サスカチュワン)と、民間の保険会社の中から好きなところと契約できる州(上記以外の州)とに分かれます。
州立保険公社がある州は価格競争が無いので選ぶ必要がありませんが、民間の保険会社から選ぶ州の場合は安くて条件が良いところを自分で探す必要があります。勤務先が契約している保険会社だと割引してもらえたり各種割引や交渉が可能なので下調べが大切となります。
州をまたいで引っ越す場合も、保険会社を変更しなくてはいけません。保険料の相場も州によってかなり違ってくるので気を付けましょう。
まとめ:カナダ留学・移住では住む州を厳選すべし
様々な事柄を州で管理しているカナダでは、住む地域が違うだけで制度や方針が変わります。
国の内部のことは州政府が管理している部分が多く、例えば最近はコロナパンデミックからの回復に向けて、各州それぞれのやり方で立て直しを目指しています。また、結婚や離婚など法律も州で定められていることがあります。
そして気を付けたいのが、州をまたいで引っ越す場合。気温や雰囲気が変わるだけでなく、住所変更はもちろん保険証や免許証、ナンバープレートや自動車保険は再申請が必要になります。住む州が変わるとルールが違って混乱!という状態が頻繁に発生します。
カナダへ留学・移住する人、他の州から引っ越しをする人は滞在先の州の情報をしっかりチェックして選ぶことをお勧めします。
州によって変わること…
- 気温・気候
- 言語
- 人種・移民の割合
- 日本との時差・移動所要時間
- 税金
- 健康保険制度
- 自動車免許・自動車保険