カナダで妊娠したとき、正直な所「男の子だったらどうしよう…」という思いがありました。その最も大きな理由はサーカムシジョン(割礼・包皮切除)をする・しないの選択をしなくてはいけないからです。
サーカムシジョンとは男性器の皮の一部を切除することで、処置をする場合は誕生後できるだけ早い段階で行います。
身体の一部を人工的に変えて、二度と自然に状態には戻らない手術を赤ちゃんに受けさせることに抵抗を持ちながらも、医学的なメリットや子どもの将来のことを考えると「やはりした方が良いのではないか」という考えも捨てきれませんでした。
カナダにおけるサーカムシジョンのメリット・デメリットと、男の子を授かったと知った日から何か月も考えた決断と体験談をご紹介します。
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サーカムシジョン(包皮切除)とは?
サーカムシジョンとは男性器の包皮の一部を切除すること。割礼というと宗教的な意味合いが強く聞こえますが、宗教と関係なく医学的な理由から処置することも海外では行われています。
宗教的にサーカムシジョンを行う場合は悩む余地は無いと思うので、今回はそれ以外のメリットやデメリットについて考えてみます。
サーカムシジョンのメリット・デメリット
サーカムシジョンのメリットとして一番にあげられるのが衛生面でのメリットです。汚れが貯まりやすいデリケートゾーンを清潔に保ちやすく、亀頭包皮炎などにかかりにくくなります。小さい子供が身体を上手に洗えず炎症が起きるというリスクを軽減できます。また、色々な性病に感染しにくくなるという研究結果もあります。
次に将来的に包茎になるリスクを軽減できることもメリットの一つです。大人になってからの手術は麻酔や縫合が必要になり痛みや恐怖もあります。それに比べて新生児期にサーカムシジョンを行ってしまえば傷もなく一瞬で済みます。
ただ自然な男性器の多くが仮性包茎であり、大人になってから手術が必要なレベルの包茎(真性包茎など)になる確率は決して高くありません。
最後に見た目の話です。これはかなり個人的な好みの問題なので、メリット・デメリットで語れるものではありませんね…。一般的に包茎の性器はからかわれる対象になったり、臭いの原因になったりとあまり良い印象が無い人が多いと思います。ちなみにカナダでは人と全裸で会う機会(温泉や銭湯)はほとんどありません。
それでは逆に、サーカムシジョンのデメリットについて調べてみました。
病院で説明をうけた医療観点でのリスクは「手術時の出血」についてです。極稀に術後に出血がなかなか止まらない事があります。ただ、滅多にないケースであるということと、出血が完全に止まったことを確認するまでは帰宅できないので大きなリスクはなさそうです。
次に精神的なデメリットでよく話題に上がるのが、「本人の選択ではない」という点。新生児のサーカムシジョンは当然ですが新生児本人ではなく、親が決めることになります。そのため大人になったときに「手術を受けたくなかった」「勝手に処置されてしまった」と感じる人もいるんだとか…。
メリット
- 清潔に保ちやすくなる
- 感染症のリスクが減る
- 大人になってからの包茎になるリスクが減る
デメリット
- 費用がかかる
- 極稀に術後出血リスクがある
- 術後のケアが必要(1週間程度)
- 処置をすると元に戻せない
悩んだので医療関係者に意見を聞いてみたら…
今回の件で、私は色々な医療関係者に相談しました。
病院や保険センターで一貫して言われたのが、「サーカムシジョンにメリットは確かにあるが、現代で医学的に大した差はない。だから完全に個人的な選択。する人もしない人もいるし、どっちでも良いよ。」でした。
ちょっと身近な医療関係者にも正直な意見を聞いてみたいと思い義姉2人(医師)に尋ねると全く正反対な言葉が出てきました。
「個人的な選択なので、どちらを勧めるとかではない。」という点では一致していました。
カナダにおけるサーカムシジョン
カナダでのサーカムシジョンは、誕生後できるだけ早い段階で行います。新生児期なら大がかりな全身麻酔や縫合をする必要がなく、術後も簡単なケアで済みます。
カナダの新生児サーカムシジョン率
ただし州によって大きな差があるようで2006-2007年に行われた調査によると、ニューファウンドランド・ラブラドール州ではほぼ0%ですがアルバータ州では44.3%と半数に近い新生児が手術を受けていることがわかります。尚、B.C.州やオンタリオ州では約30%です。
サーカムシジョンは保険適用?手術費用について
カナダでは出産を含む基本的な医療は無料です。サーカムシジョンも十数年前までは無料で、出産直後にチョキン!と処置してくれていました。しかし、近年は個人的な選択ということで保険適用外になりました。そのため希望する人は出産とは別に予約を取り有料で行います。産婦人科のクリニックのほか、サーカムシジョン専用のクリニックもあります。
アルバータ州の平均的な費用は200~500ドルでクリニックによって異なるようです。ちなみに私が妊婦検診でお世話になったクリニックに問い合わせると400ドルでした。
なかなか微妙な値段ですね…。でも大人になってからの手術だと麻酔や縫合が必要になるため1000ドル以上は軽く超えるそうです。サーカムシジョンは新生児期(生まれてからなるべく早い段階)に行うのが最も簡単・安全でお財布に優しいのです。
体験談:処置の流れと経過
これからカナダで生きていく息子にとって最良の選択を悩みに悩んだ結果、サーカムシジョンをすることにしました。
出産した総合病院に附属しているクリニックに問い合わせるとサーカムシジョンは出来るだけ早いのがベストとのことで、生後10日目に手術をすることが決まりました。10分程度の日帰り手術です。
特別な手術室ではなく、普通の診療室に器具を運び込んで行われます。両親は見ていてもいいし怖ければ部屋の外で待っていてもいいと言われました。正直怖いですが、逃げるのは無責任な気がして一緒にいることにしました。ドクターとナース1名がテキパキと処置をして本当にあっという間に終わりました。息子は30秒ほどワー!と泣きましたが麻酔クリームが効いているのか、痛みがまだ理解できないのか、抱っこするとすぐに泣き止み元気そうにしています。心配していた出血もほとんど無く、止血を確認後帰宅しました。
表面の皮膚ができあがるまでの1週間はあまり触らないようにとのこと。ガーゼにたっぷりのワセリンを塗ってオムツ替えの度に取り替えます。
しばらくは痛みがあるのかと思いましたが、息子は全く気にしていない様子でケロッとしています。お風呂で洗う時も平気そうでした。
まとめ:サーカムシジョンは必要?私たちの決断
私たち夫婦はサーカムシジョンをする方を選択しました。理由は色々ですが、ケアが楽であること・大人になってから手術を受けるリスクが減ることが大きな理由です。また、男性である夫の意見も参考にしました。
そして私はこの件について悩み過ぎて産後ノイローゼ気味になってしまいました。サーカムシジョンをしない場合は「毎日綺麗に洗えているか」や「炎症が起きたらどうすればいいか」「ムキムキ体操(?)とやらをするかしないか」など、子どもの成長に伴い悩むポイントが発生することを考えると、とにかく息子の性器のことでこれ以上悩みたくないという思いが強くなってきたのも決断のきっかけです。
今回、色んな人に聞いたり医療関係のサイトで調べたところ、サーカムシジョンに医療観点でメリットはあるけども推奨するほど大きくはないとされています。あくまで個人的選択でどちらを選んでも大丈夫とのこと。カナダの新生児サーカムシジョン率は年々下がってきているとも聞きます。