先進国でも無料で受けられる定期予防接種は国によって異なります。
カナダ移住を考えている人は、日本の定期予防接種で対応できているかどうか心配かもしれません。
そこで、小児定期予防接種の内容をカナダと日本で比べてみました。予防接種可能な病気の英語表記一覧も併せてご紹介します。
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カナダの予防接種は州で管理
生後2ヶ月でスタートするカナダの定期予防接種は州によってスケジュールやワクチンの種類が若干異なりますが、予防できる病気は基本的にどの州でも同じ。
最初の予防接種の時にImmunization Record というシートがもらえるので、以降接種のたびに病院で記録してもらいます。シートは州によってデザインが異なりますが、州をまたいで引っ越す場合も接種証明として有効です。
きちんとした接種記録がないと小学校に入学できない場合もあり、日本と比べてかなり厳しいですね。
子供が摂取するワクチンの英語表記一覧
予防接種のことを英語で “vaccination” または ”immunization” と言います。“immunization” は免疫という意味ですが、予防接種の意味でも使えます。
カナダで定期接種に含まれるワクチン(病名)の英語表記を調べました。4種混合のように数種類で1本の注射になっているものもあります。
- ジフテリア (Diphtheria)
- 破傷風 (Tetanus)
- 百日咳 (Pertussis)
- ポリオ (Polio)
- インフルエンザb菌 (Haemophilus influenzae type b)
- B型肝炎 (Hepatitis B)
- 肺炎球菌(Pneumococcal)
- 麻疹(Measle)
- 風疹(Rubella)
- 水痘(Varicella)
- ヒトパピロマーウイルス(Human papillomavirus)
- おたふくかぜ(Mumps)
- ロタウイルス(Rotavirus)
- 髄膜炎(Meningococcal)
- 結核(tuberculosis)
- 日本脳炎(Japanese encephalitis)
黄:カナダと日本両方で定期実施
赤:カナダでのみ定期実施
青:日本でのみ定期実施
参考:日本の子どもが接種するワクチンfa-external-link、カナダ政府公式サイトfa-external-link
日本とカナダの定期予防接種の種類が異なります。 日本では日本脳炎とBCGが定期接種。カナダではロタウイルス、おたふくかぜ、髄膜炎が定期接種に入っています。
結核(BCG)は欧米やヨーロッパではずいぶん前から定期接種ではなくなっており、結核自体が一昔前の病気という印象。
一方で、新型コロナウイルス(COVID-19)にBCGが効くとか効かないとか噂になっています。現在のところ関連性は判明していませんが、もしそうなら日本人は超グッジョブです!
カナダと日本の予防接種の内容とタイミングの違い
カナダの定期予防接種と日本の定期予防接種には違いがあります。一つは種類、もう一つは接種のタイミングです。それでは、各予防接種詳しく説明していきます。
カナダ・日本共通の定期予防接種
4種混合・5種混合・6種混合
日本では4種混合が一般的ですが、カナダではインフルエンザbやB型肝炎と合わせた5種または6種混合ワクチンを接種することになっています。
それぞれ防げる病気はこちら。
- ジフテリア (Diphtheria)
- 破傷風 (Tetanus)
- 百日咳 (Pertussis)
- ポリオ (Polio)
4種混合に追加
- インフルエンザb菌 (Haemophilus influenzae type b)
5種混合に追加
- B型肝炎 (Hepatitis B)
日本では生後3カ月に4種混合(1回目)の接種をします。HibとB型肝炎の予防ワクチンは、2カ月の時に各1回目を接種します。
カナダでは生後2カ月で5種混合または6種混合(1回目)の接種をし、1歳半までに合計4回摂取します。州によって、5種を混合で受けてB型肝炎は単品で別スケジュールのところもあれば、6種と5種を組み合わせるところもあります。
肺炎球菌(Pneumococcal)
日本では生後2カ月、3カ月、4カ月、12カ月で合計4回接種します。
カナダでは生後2カ月、4カ月、12カ月での3回スケジュールとなっています。(一部の州を除く)
麻疹・風疹(Measle ・Rubella)
日本では2種混合でMRワクチンとして知られています。
カナダでは、おたふくかぜと合わせた3種混合でMMRと呼ばれています。
どちらの国でも12カ月で1回目、小学校入学前に2回目の定期接種です。
水痘(Varicella)
みずぼうそうです。
日本では12カ月で1回目、2歳になるまでに2回目を接種します。
カナダでも定期接種に入っていますが、接種のタイミングは州によって様々です。12カ月または15カ月で1回目、小学校入学までに2回目をする地域が多いようです。
単独で接種することは少なく、上記のMMRと合わせた4種混合(MMR-V)が一般的です。
ヒトパピロマーウイルス(Human papillomavirus)
HPVという略称のこのウイルスは、子宮がんの原因として知られています。
カナダでは全ての州で12歳までの定期接種に含まれています。
日本では2013年から定期接種の仲間入りをしましたが、その後すぐに副反応騒動があり厚生労働省は「積極的な推奨をしない」という方針に変更しました。
定期接種に含まれているにもかかわらず日本での接種率は1%未満だとか。
HPVと副反応についての議論は現在も続いていますが、「ワクチンを導入している先進国で子宮頸がんが急増しているのは日本だけ…」と聞くとこのワクチンの効果と重要性が見えてきます。
カナダでは定期・日本では任意の予防接種
おたふくかぜ(Mumps)
カナダでは麻疹・風疹と合わせた3種混合(MMR)、または麻疹・風疹・水痘と合わせた4種混合ワクチン(MMR-V)で予防するのが一般的です。州により、種類と接種タイミングが異なります。
日本では、おたふくかぜ(Mumps)は任意接種となっています。料金は2回で約2万円強です。
ロタウイルス(Rotavirus)
ロタウイルスのワクチンは経口接種。透明な液体を飲ませます。
カナダのほとんどの州では2カ月、4カ月、6ヶ月と3回の定期接種です。ケベック州では2回の定期接種です。もちろん無料で受けることができます。
日本では2回接種ワクチンと3回接種ワクチンがありますが、どちらも任意接種のため有料。自己負担で約三万円です。
髄膜炎(Meningococcal)
カナダでは2回、州によっては3回受ける定期接種で無料です。
日本では任意で受ける予防接種。有料で2万円強と高額。特に、海外渡航前に受けることを推奨されています。
カナダでは任意・日本では定期の予防接種
結核(tuberculosis)
BCG、ハンコ注射と言えば日本人なら誰でも「ああ、アレか…」となるアレです!
日本では定期予防接種の一つですが、カナダでは医療従事者などハイリスク群にのみに接種を限定しており、一般人で接種している人はほとんどいません。
2017年のデータによると、アクティブケースが1796件。うち、89.2%は外国生まれの人または先住民です。WHOによると、現在カナダで結核による死亡は極めて稀とのこと。
医療従事者以外の一般人が任意接種できる機関を調べてみましたが見つかりませんでした。
日本脳炎(Japanese encephalitis)
日本脳炎は定期接種に入れている国は日本だけですが、カナダでもトラベルクリニック等で接種が可能です。
日本に長期滞在する人はドクターから接種の提案をされることがあります。価格は200ドル前後(約15,000円)です。
カナダでは予防接種を受けないと学校へ行けないって本当?
カナダでは、小学校や幼稚園の入学・入園時に予防接種を正しく受けている証拠(記録)の提示を求められることがあります。
例えば、オンタリオ州の学校へ入学する際に必要な予防接種は…
- ジフテリア
- 破傷風
- ポリオ
- 麻疹
- おたふくかぜ
- 風疹
- 髄膜炎
- 百日咳
- 水痘
無料で受けられる定期接種13種類のうち上記9種が必須分となっています。
現在、オンタリオ州とニューブランズウィック州以外では予防接種は必須ではありませんが、今後他の州でも必須となる可能性があります。
集団免疫(Herd Immunity)が大切な理由
多くの人が予防接種で免疫をつけることによって感染症の蔓延を防止することを集団免疫といいます。
免疫がない人と感染者の接触機会が減り社会全体として感染症の流行を防ぐことができます。 赤ちゃんや妊婦をはじめ、使用中の薬との相性やアレルギーで予防接種を受けることができない人を集団免疫で感染リスクから守ることは集団生活でとても大切。
しかし、日本でも世界でも、子供に予防接種を受けさせない「反予防接種」という人が一定数います。
ワクチンに効果がないから、子供に痛いのはかわいそう、受けなくても大丈夫、副反応が怖いからなど理由は様々。 副反応を恐れる気持ちはわかりますが、接種して副反応が現れるリスクよりも、接種しないで病気にかかるリスクの方が怖いです。
日本の任意予防接種はハードルが高い
カナダと日本で定期接種の種類が異なるのでいろいろ調べていく中で気づいたこと。
感染者が多いロタウイルスや後遺症が残る可能性があるおたふくかぜが任意接種(有料)なのに、すでに一昔前の病気である結核のワクチンが定期接種に入っている不思議です。
BCGの必要性はさておき、問題となるのが本来受けるべきワクチンが有料であること。自分の子供に受けさせたいと思っても、一種類2~3万円の予防接種を何種類も負担するのは大変です。さらに、「任意接種」と言われると必要がなさそうにも聞こえます。
医療の「質」ではトップクラスの日本が、予防接種では先進国の中でも最低レベルとも言われています。
一方、カナダでは毎年のインフルエンザワクチンも無料で接種可能です。毎年インフルエンザの時期になるとドラッグストアのブースでいつでも受けられます。こんなに医療サービスが充実していて保険負担額0なのはすごいですね。