コモンローとは家族同然に暮らしているカップルのこと。ようするに事実婚です。カナダのコモンローは家族の形として法的に認められており、一般社会にも広く浸透しています。
結婚した時と同じ社会福祉制度が受けられるコモンローですが、結婚とイコールにしてしまうと危険かもしれません。
カナダのコモンローの特徴と、結婚との違いや権利についてご紹介します。
記事の内容をざっくり説明
- コモンローは家族同然の生活しているカップルのこと
- 最短同棲期間は1年から3年
- 結婚とほぼ同様の権利が認められる
- カナダでは約2割がコモンロー
- コモンローで移民が可能
- 財産分与や遺産相続の基準が結婚と異なる
- これらの定義は州によって異なる
タップできる目次
コモンローとは何か。結婚しない理由
コモンロー(common-low)とは、結婚の届けを出していないけど夫婦同然の生活をしているカップルのこと。(性別は関係ありません)
同じところに住み、一緒に暮らす。日本でいえば事実婚や内縁に近い状態のことですね。コモンローとして認められる最短同居期間は1年~3年で、適用される法律や子供の有無により異なります。詳しくは下の項目「コモンローと認められる期間」でご説明します。
カナダのコモンローは結婚とほぼ同様の権利が認められています。例えば、確定申告・納税・年金の面では結婚しているカップル同様の控除やサポートが受けられます。また、パートナーの会社から福利厚生を受けることもできます。
色々な民族で構成されるカナダでは、家族や宗教の違いなど様々な理由で結婚が難しい人がいます。誰でも結婚しているカップルと同様の権利を得られるようにしようというがコモンローの経度。
そして、自ら結婚ではなくコモンローを選択している人もたくさんいます。コモンローを選ぶ理由は様々で、どんな理由でも(理由が無くても)条件さえ満たしていれば認められます。
- 宗教的理由
- 家族間の理由
- 結婚手続きが面倒
- 結婚という概念に縛られたくない
- 結婚する理由がない
- 結婚までのお試し
コモンローでカナダ移民申請ができる
カナダではコモンローでの移民申請が可能です。
ファミリークラスの移民申請で適用される家族法のコモンロー定義は、「12か月以上同棲していること」。
移民申請手続きの流れは結婚しているカップルと同様ですが、コモンロー関係であること(1年以上の同棲・財産共有)を証明する必要があります。
コモンローを証明するには
コモンローの証明は、一定期間一緒に住んでいる(財産を共有している)ことを証明することが中心となります。一定期間というのは、目的や状況により変わります。
例えば移民申請に利用したい場合は、家族法が適用されるので、1年以上一緒に住んでいるということが証明できればOKです。
- 共同名義の資産
- 共同名義の賃貸契約
- 同居している家の光熱費の支払い証明
- 住所が書かれた公式文書(免許証など)
- 前年の確定申告書類
カナダでは約20%がコモンロー
カナダ統計局の調査によると、カナダで生活している夫婦のうち、結婚しているカップルが78.7%、コモンローのカップルが21.3%となっています。(参考:2016 Census)
州別に見てコモンローの割合が高いのが、ケベック州(39.9%)、そして準州であるヌナブト(50.3%)、ノースウエストテリトリー(36.6%)、ユーコン(31.9%)です。
一方で、日本人が多いオンタリオ州(14.4%)や、B.C.州(16.7%)をはじめとする他の州では、コモンローの割合は低くなっています。
一部の地域を除けば、まだ割合は高いとは言えないコモンローですが、数は年々確実に増えてきています。
州によってコモンローのルールが異なる
結婚と違い、コモンローのルールはとても複雑。州によってルールが異なることもコモンローが複雑と言える理由の一つです。
たとえば、B.C.州ではコモンローと認められるために、結婚同然の同居期間は2年以上とされています。一方、オンタリオ州ではコモンローになるためには最低でも3年間パートナーと一緒に生活しなくてはなりません。
そして、移民申請に必要な同棲期間は1年です。このように、どの法律が適用されるかによりコモンローのルールが異なります。
コモンローと認められる最短同居期間
1年:ファミリークラス移民申請時
2年:B.C.州、サスカチェワン州、ノバスコシア州
3年:アルバータ州、マニトバ州、オンタリオ州、ケベック州、PEI州
※二人の間に子供がいる場合は短縮されます。
結婚と決定的に違う点!コモンローで別れた時
付き合っているときは結婚しているカップルと同じ権利が与えられるコモンローですが、決定的に違うのが別れた時。
結婚しているカップルの場合は、結婚期間中に取得した財産は二人で均等に分け合うことになります。その一方、コモンローカップルが別れるときは、財産はそれぞれ名義人や所有者に帰属します。預金はもちろん、家や車などの財産も同様です。
また、無遺言で死別したときの財産相続の権利も異なります。以下はオンタリオ州法に準ずる遺産相続のルールです。
法律婚(結婚)の場合
無遺言で残された配偶者には、優先的相続分として、遺産の中から最初の20万ドルを相続することになっています。そして、亡くなった配偶者との間に子供がいる場合は、遺産から20万ドルを差し引いた残りの財産を、配偶者と子供との間で分けることになります。出典:http://torja.ca/estate-planning1808/
事実婚(コモンロー)の場合
パートナーは、遺産の法定相続人になることができません。もし、亡くなったパートナーとの間に子供がいる場合は、その子供が第一順位の法定相続人になります。子供がいない場合は、亡くなったパートナーの両親へ、両親がすでに他界している場合はその兄弟姉妹へ、と血縁関係をたどって、法定相続人が決められています。出典:http://torja.ca/estate-planning1808/
尚、コモンローパートナーとの間に子供がいる場合も、18歳までは相続できません。にもかかわらず、夫婦関係であるパートナーには相続権が無いため、残された家族が金銭的に厳しくなるケースが多発しているそうです。
まとめ: コモンローの落とし穴に注意!
カナダでは結婚とコモンローどちらを選択するも自由です。
コモンローで数年後に結婚する人もいます。コモンローで結婚しないまま子供がいる人もいます。それぞれの状況に合わせていろんな選択肢があるのはとても良いことですね。
カナダのコモンローは自立したカップルが誰でも選べる、結婚と並ぶ選択肢の一つなのです。
その一方、コモンローで結婚と全く同じ権利を持てるかどうかは州によって大きく異なります。そのため、住んでいる地域のルールを確認し理解したうえで選択するべきと思います。