移民を積極的に受け入れているカナダでは、移民向けのサービスが充実しています。
その一つが、英語とフランス語を無料で学べる言語プログラム「LINC」。色々な都市の大学や専門学校で開催されています。
留学生向けのESLとの違いや、申し込み方法、授業の内容など、移民向けの無料語学プログラムLINC(Language Instruction for Newcomers to Canada)をご紹介します。
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LINC(Language Instruction for Newcomers to Canada)とは
語学学校や大学で留学生向けに開催しているプログラムをESL(English as a Second Language)と言いますが、移民向けに開催している言語プログラムのことはLINCと呼ばれています。
カナダは英語とフランス語が公用語なので、どちらか片方または両方の言語を無料で学ぶことができる移民支援プログラムです。
LINC受講資格があるのは17歳以上の永住権保持者または難民で、カナダ市民や留学生は受講することができません。
ESLと同じく、フルタイムかパートタイム(午前午後どちらか)のコースを選ぶことができます。
留学生向け語学学校(ESL)と移民向け授業(LINC)の違い
ESLとLINCはどちらも言語を学ぶプログラムですが、LINCでは語学を学習するESLの内容(英語やフランス語のリスニング、リーディング、ライティング、スピーキング)に加えて、カナダの地理や歴史法律も勉強します。
LINCプログラムとは、これからカナダで生活する移民の人々が生活に困らないように、カナダ人が知っている一般的な知識を習得する場でもあるのです。
また、留学生が通う語学学校や、大学が提供するプログラム(ESL)は有料ですが、移民向けのLINCは完全無料。受講資格さえあれば誰でも無料で参加することができるのが魅力の一つです。
ESLとLINCの違い一覧表
LINC | ESL | |
対象 | カナダ移民 | 誰でも |
レベル | 初心者~ | 初心者~ |
授業内容 | カナダについて | 英語 |
料金 | 無料 | 約1500ドル |
託児所 | 施設による | ない |
カナダのコミュニティカレッジや州立大学ではESLとLINC両方のプログラムを提供していることもあります。
同じ大学のプログラムでも、ESLとLINCとで内容が異なり、もちろんクラスも別々です。特に、ESLは4週間で約1500ドルのところ、LINCは完全無料というのは大きな違いですね。
大学で開催されるプログラムに参加する場合、ESL・LINCどちらのコースでも正規大学生と同様に大学施設を利用することができます。
開催している学校はたくさんあり、好きなところを選ぶことができます。例えばオタワの場合、約40の語学学校、高等学校、大学でLINCプログラムを開催しています。(フランス語含む)
申し込み方法と受講までの流れ
LINCは人気がある場合、順番待ちをすることになります。
それでは、申し込み方法とアセスメントテストの内容をご紹介します。
- 最寄りのテストセンターで予約
- アセスメントテストを受ける
- 結果を受け取り、学校へ申し込む
- 学校から受講開始日の連絡を受ける
- 受講スタート
まずが最寄りのLINC専門機関に電話してアセスメントテストの予約をします。テストを受ける場所は都市により異なります。下記のウェブサイトで該当の都市で探してみてください。
テスト予約の電話をしてから実際にテストを受けるまで1か月以上待つことも…。アセスメントテストの結果は1年間有効なので、まだ学校に通う気はないという人でも早めに申し込むことをお勧めします。
アセスメントテストの内容
予約した日時に会場に到着すると、移民と思われる人が数人待っていました。
名前を呼ばれて個室に案内されると、名前や住所、移民前の職業などを聞かれ担当者がコンピューターに打ち込みます。テストはまだ始まっていませんが、ある程度英語が話せないと、この段階で苦労するかもしれません。
リスニング
個室で担当者と1対1になり、あらかじめ録音された音声(会話)を1回聞いて、その会話の内容を担当者に説明するというもの。時々、担当者から音声の内容について質問されます。
聞かれる内容は事前にわからないので、会話を全部聞き取れても細かい内容を覚えていないこともあります。また、スピーキングが苦手な人は、会話の内容を説明するのにてこずります。
リーディング
リーディングはとても簡単でした。
TOEICのような内容をイメージしておけば問題なくこなすことができるでしょう。後半は単語が難しくなりますが、日本人は学校のテストや受験でリーディングは慣れているので、心配無用だと思いました。
ライティング
課題はお題に沿って30分以内に2つの記事を書くことで、個人的には一番難しかったです。
英文作成に慣れていないと、起承転結でまとまった文章がなかなか書けません。内容を考えていると時間があっという間に過ぎていきました。
スピーキング
個室に戻り、1対1で行われます。急に「なんでもいいから話して」と言われ、かなり困りました。
「何でもってどんなことですか?」と聞いてみると、「家族のこととか、仕事のこととか、本当になんでもいい」と言われました…。お題をくれないと逆に何を話していいかわからず悩みます。
これからアセスメントテストを受ける人は自分の得意な話題を1つ用意しておくことをお勧めします。
LINCアセスメントテストはCLB10段階で評価
CLB (The Canadian Language Benchmarks) とはカナダ独自の英語力評価システム。リスニング・リーディング・ライティング・スピーキングの4技能をそれぞれ10段階で評価します。
ちなみに、大学留学などで必要なIELTSに変換すると下記のようなレベル分けになります。参考用にIELTSを基にしたTOEIC変換(目安)も載せます。
CLB | IELTS | TOEIC(目安) |
10 | 7.5~8.5 | |
9 | 7.0~8.0 | 870以上 |
8 | 6.5~7.5 | 820~970 |
7 | 6.0 | 740~820 |
6 | 5.0~5.5 | 600~740 |
5 | 4.0~5.0 | 500~600 |
4 | 3.5~4.5 | 300~550 |
3 | 2.5~3.5 | 270~470 |
2 | 1.5~2.0 | 270以下 |
1 | 1.0 |
実際には、4技能ごと別々に評価されます。詳しい換算方法は下記のブログをご覧ください。
LINCを受講する学校を選ぶ
アセスメントテスト結果を当日その場で受け取れる地域もあれば、後日郵送され地域もあります。
テスト結果を基に、通える学校を一覧から選びます。
スコアの結果によっては、行ける学校が限られてきます。CLB4~6を受け入れている学校が多く、それ以下・それ以上だと選べる学校が少なくなります。
特にCLB9以上になるとLINC開催している学校はありません。このレベルになると、英語学習は不要で即生活可能なレベルということでしょう。
私が希望していた学校は申し込み当時、定員いっぱいで順番待ちリストに入ることに。
アセスメントテストを受けるだけで1か月も待ったから、学校もかなり待たないといけないかと思いましたが、予想に反して1週間後には通えることになりました。
次に、実際にLINCプログラムを受けてみた感想と、1か月後のテスト結果を公開しています。さて、英語力は伸びたでしょうか?!
大学開催のLINCクラスへ1か月通ってみた
私が選んだのは、近所のコミュニティーカレッジです。理由は9:00~15:00のフルタイムだったことと、大学内にはスターバックスや図書館もあり授業以外も楽しめそうだと思ったから。
本来3か月で1タームのプログラムですが、私は途中から参加したので1か月だけの受講となりました。希望すれば次のタームも在籍可能です。
ただし、出席率が悪い場合は他の参加希望者に枠を譲ることになるそうです。
クラスの雰囲気・生徒の割合
LINCプログラムを受けられるのは移民(難民)の人に限られています。そのため、教室の雰囲気も留学生向けESLとは大きく異なります。
実際に感じた違いをご紹介します。
クラスメイトの職業・国籍・年齢層
クラスメイトは全部で約12名ですが、欠席者が多いので平均は6人ほどです。
私が参加したCLB7/8(上級)のクラスは、中東(シリアやアフガニスタン、UAE)や、メキシコなどの南アメリカからの移民(難民)が多いです。
なんと日本人どころかアジア系は私一人で、クラス担当の先生からも「日本人が来たのは初めて!」と言われました…。
CLB5/6(中級)のクラスでは中国人らしきアジア人を多く見かけました。
年齢層は40歳前後と高め
留学生向けESLとの大きな違いは年齢層。
10~20代が多いESLに比べ、LINCでは30~40代が多くなります。ほとんどの人は子供がいたり、家族で移民している人たちです。20代は私一人でした。
ESLの時のような楽しい雰囲気ではありませんが、真剣な人が多いので落ち着いて授業に取り組むことができます。
ハイクラスな職業の人が多い
なぜかクラスメイトのほとんどが、自国では医師・弁護士・エンジニア・研究者・教授などハイクラスな職に就いていたリッチ層の方々…!カナダ移民(難民)のハードルの高さを感じました…。
仕事の話など、面白いストーリーを色々聞けて勉強になります。
ちなみに私はファミリークラス移民なので、学歴も職歴も不問…ブロガー(自称)でも大丈夫^^;
LINC授業内容
英語4技能をバランスよく学びます。特にアカデミックライティングを集中的に学びました。
留学生が通う語学学校ESLではスピーキングにフォーカスしているが学校が多いですが、LINCでは大学進学を目指している人もいるので、小論文などの書き方を徹底して教えられます。
課題やテーマも、政治や法律、人権問題など難しい。そして、英語力以前にテーマについての基礎知識と自分の意見をしっかり持っていないと発言できません。
言語だけでなく、カナダの税金や年金システム、州別の政策などを勉強します。そのため、英語が上級の人でも学べることはたくさんあります。
1か月のLINC成果
ターム終了時のCLB(※)の結果を見ると、受講前からぐ~んと伸びたことがわかります。特にライティングの結果には担当の先生も驚いていました。
実際のところ、忘れていた英文の書き方(接続詞のルールなど)を思い出したと言うほうが近いかもしれませんが…。
L | R | W | S | |
受講前 | 6 | 8 | 5 | 6 |
受講後 | 8 | 9 | 8 | 7 |
※CLB (The Canadian Language Benchmarks) はカナダ独自の英語力評価テストのこと。10段階で評価します。詳しくは下記の記事をご覧ください。
まとめ:LINCはカナダについて学べる機会
カナダ移民時に取得できるPRカード(permanent residence card)があれば、カナダ人とほぼ同様の権利を貰えます。
大学に通うことも仕事をすることも可能ですが、その前に英語の力をつけたいという人にとってLINCはとても有意義なプログラムです。無料なのにフルタイムでしっかりと学べます。
特に大学開催のLINCでは、学生証がもらえるほか、図書館などの大学施設を自由に使えるので束の間の大学生気分を味わえますよ。
カナダの政策や地域のことを学べるLINCプログラムは、語学の勉強だけでなく色々な方向へ視野を広げるいい機会。カナダ移民になったら是非ご検討ください♪